fc2ブログ





「借りぐらしのアリエッティ」は大傑作でした 

 まずは嬉しかったこと。「C.M.B.」のエジプトの話で森羅の唱えた説に、大学のエジプト考古学の先生からお褒めの言葉をいただきました。やった―!

 と言うことで本題、「借りぐらしのアリエッティ」見てきました。

 骨太のスト―リ―と深いテ―マの大傑作じゃないか!「すごいもの見せてもらった!」と頭をボ-っとさせて映画館を出てきました。
 でも巷間なぜか「スト―リ―がない」と評されてるのを見て「???」となり気になって翌日もう一度見に行きました。
 
 で、自分なりの結論
 「スト―リ―がない」と思わせる原因はおそらく「宣伝」のせいような気が。

 「アリエッティ」を「元気な女の子の冒険物語」とか「アリエッティとショウの出会いの物語」と宣伝しているようなのですが、そんな読み口でこの物語見ていたら物語なんかほとんどありません

 おそらくそんな見方したら「悪い奴は結局どうなるの?消化不足!」とか「二人の関係は!全然描ききれてない!」と言う感想になるような。

 もともとそんなもの描いてないし、そういう見方をもししたら、途中の「人の数の話」や「小人の家」の話がさぞかし唐突なものに見えたろうと思います。て、いうか本来綿密に作られてる作品が「がたがた」に見えるでしょう。
 この物語で最初にアリエッティが見られてしまうのも重要な意味があるし、キャッチコピ-の「人間に見られてはいけない」もメチャクチャ重要な意味があります。

 これから見に行こうとしてる人は、この作品は「冒険物語」でも「恋愛物語」でもないと思ったほうがいいです。
 「借りぐらしのアリエッティ」の物語の形態で一番近いのは謎解きミステリ―です。

 アリエッティの一族に昔から伝えられてきた「人に見られてはいけない、もし見られたら必ず引っ越さなければいけない」という言葉。
 その謎をアリエッティとショウの物語を通して解き明かすというスジ立てなのです。

 
大手の広告代理店が2つも付いていて、なんでこんな宣伝したんだろ?

 この先はネタバレになるので、もう見た人のために。


 この映画のテ-マは「どんなに心優しく、弱いショウのような人間でも、小さく健気に生きているアリエッティに関わればその生活を破滅させてしまう。どんなに良いことをしてあげようとしても人間である以上、災いを与えてしまう。だから一緒にいられない」と、いうものです。

 この物語で、お手伝いのハルさんがアリエッティ達を追い出したように感じたとしたらそれは違います。
アリエッティが掟を破り、ショウが良かれと思ってやったことが結局ハルという人間を呼び込んでしまってるわけです。だから、くぎ抜きや金の器を落としてしまった愚かさを見せるシ-ンに意味があるのです。
 この物語にハッキリとした悪人がいないのはこのためです。だから冒険物だと思ってみてた人はがっかりするわけです。

 そして結局、アリエッティとショウはなすすべもなく別れるしかないわけで、これは「悲しいお別れの物語」なのです。だから男の子も女の子もハッキリくっつきません。恋愛物として見てた人は肩透かしを食うわけです。

 ただ、謎解き物としてみるなら山ほど伏線が張ってあります。

 「人に見つかったら絶対引っ越さなくてはいけない」という謎を最初に何度も振っています。
 「例えショウのようないい人間でもダメ」と父親にきつく言われます。 

 それに「昔、小人のために家を作ってやる良い人間」がいたとしても「もし見つかれば」例外なく小人たちに災いをもたらし、ある家族は行方不明になってしまったとか。

 あと、ショウは出会いがしらにアリエッティを見つけてしまいますが、見つけてしまったことからこのお別れが始まっているわけです。

 この物語は出だしのシ-ンは大きな町の俯瞰から始まります。巨大な人間の世界です。
 その中でショウはおばあさんの家に連れて行かれ、そこは自然がまだ沢山残っているのですが、周りにいる生き物はネコ、カラス、虫、せいぜい離れたトコにいるタヌキくらいです。他の生き物はもう残ってないのを表現してるのだと思いました。
 どんなに良き人でも「人がいる」と言うだけで小さい生き物達が離れてゆく。
 人間の強力さが「人が67億人いる。」というのが大事なセリフにつながってるのだと思います。

 骨太の謎解きのスト-リ-に深いテ-マを絡めたすばらしい作品だと思いました。
 
スポンサーサイト




[2010/07/29 18:56] 映画の話 | トラックバック(-) | コメント(-)